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道具図鑑 草刈機(モアその他)

 さて刈り払い機というのはかなり万能な機械ですが、樹幹周りや際刈りではやはり気を使いますし、1日中振り回すと疲れます。細かいところの草刈ではやはり手鎌にまさるものはありません。道具図鑑 草刈機(モアその他)_e0182430_1905343.jpg
 左端は片刃の大鎌で、近くの金物屋さんが閉店セールをするときに半額で買いました。きちんと研ぐと、小指ぐらいの潅木まで軽く切れます。
 真ん中はホームセンターで売っているものですが、柄がアルミで軽く、背中側は草を集められるように櫛状になっているのが特長です。これは刃をあまり研がず、切るというより引っ掛けてちぎるように使っています。
 しかし長柄の鎌を使うような場面はたいてい刈り払い機で済ますので、みかんの場合、圧倒的に多く使うのが右端の小鎌です。それも腰袋に入る極小のものが便利です。他にも野菜用には鍬状のものがいろいろありますが、果樹園では土を耕すことはイコール根を切ることにつながるので、あまり出番はありません。

 逆に果樹園で特に使えるのが、手押しや乗用の草刈機です。「モア」と呼ばれていますがこれは芝生などを刈るという意味の「MOW」にerが付いた形です。
 我が家で使っているのはロータリーモアの最小型で、刈り幅40cm、重さ40kg。小型モアは、農業を引退しても庭の草刈などで使えるため、なかなか中古が出ません。このモアも新品で12万円ぐらいしました。刈り払い機なら普及品3台が買える金額ですが、それ以上の価値はありました。

 刈り幅が狭いので、仕事の速さとしてははっきり言って刈り払い機より遅いです。でも自走式で、基本的には後ろをついて歩くだけですから、一日中草刈をしても疲れません(歩き疲れはあります)。道具図鑑 草刈機(モアその他)_e0182430_19454081.jpgこの程度の足場で、エンジンもかけず積み下ろし出来るというのは、小さな畑をあちこちに借りる新規就農者には有難いです。

 石の多い畑では使えないと思っていましたが、慣れてくるとそうでもありません。むしろ切り株のような埋まったものに弱くてすぐに止まってしまいますが、駆動部に来る前にベルトが切れるので大きな出費にはならずにすみます。ちなみに純正のベルトは3000円以上して痛手でしたが、ベルト部のプラスチックカバーを外して放熱をよくしたら、汎用品の500円以下のやつでもほとんど切れなくなりました。ただし手足に当ると危ないので、金網か何かでカバーをこしらえたほうが良いかもしれません。

 背の高い草を刈るときには、前輪を45度ぐらいまで上げて何度か刈ってから、最後に通常刈りします。なるべく膝丈ぐらいまでに刈っておいた方がラクです。
 刈られた草は、ハンマーナイフほどではありませんが結構細かく、フォークですくえないぐらいまで砕かれます。刈り高もそろうので草刈後はかなり綺麗です。

 欠点としては、エンジンの動力を走行と草刈の両方に使うため、特に上り坂ではパワー不足となり、手で補助的に押す力がかなり必要で、疲れます。斜面を横向きに走るのも苦手で、どんどん横滑りして降りていってしまいます。
 これらの欠点はどちらも、タイヤがあまりにちゃちなことに原因があるのではないかと思われますので、ラグの深いゴムタイヤ替えたら相当改善されるのではないでしょうか。出来たらタイヤ径も少し大きくして、60mmの刈高を90mmぐらいまで上げたいところです。

 最後に少しだけ除草剤のことにふれておきます。
 我が家では基本的に除草剤は使いませんが、一般の農家ではむしろこれが主役でしょう。うちで使うのは次の3つの場合。
(1)境界部で、隣の方が使用を望まれるとき
(2)電気柵の下で、山際など、草刈のしにくいところ。柵線の真下で幅20cmぐらいを帯状に
(3)実験用の畑
 また、市場出荷用の畑でどうしても草刈が間に合わないときに、使うことがあります。

 圧倒的に多く使われているのが葉から吸収されて根を枯らす「茎葉移行型」、このタイプの除草剤で一番有名なのが「ラウンドアップ」で、最新型の「マックスロード」と、別メーカーの「タッチダウンIQ」がツートップではないでしょうか。ラウンドアップの半額程度で売っているものは、2世代前のラウンドアップとほぼ同じ中身です。きちんと効きますが、効果が出るまで時間がかかります。

 安物グリホサート剤を使えば草刈機の燃料代よりコストが安くなります。しかも作業時間も10分の1ぐらいに短縮できるし体力的にも楽です。さらに除草剤で助かるのは、株元が綺麗になることです。株元が草ぼうぼうだと、カミキリの産卵が多くなります。鎌で刈るだけではすぐ生えてくるし、手で引っこ抜くとミカンの細根までちぎれてしまいます。

 ただ、このタイプの除草剤を使うと、法面など、あっという間に崩れます。大げさなんとちゃうかと思っていましたが、本当にそうでした。粘土質だとわりと大丈夫なのですが、砂利混じりの赤土とかだとてきめんです。平地に使ってさえも、畑面が2~3cm沈み、靴底が土をえぐるようになります。雑草根っこの緊縛力恐るべしです。
 これを防ぐためには移行性の低いタイプを選べばよく、同じ茎葉移行型でもグルホシネートがこれにあたりますが、移行性が低いものは薄めの濃度で大量散布する必要があります。逆に最新のラウンドアップなんかだと、高濃度少量散布で済ませることが出来、散布作業は格段にラクです。面積当りの投下量はどちらでも変わりません。

 というわけで、現在、除草剤を使わないのは変人のみです。有機農業をしているくせに除草剤に詳しいというのは、さらなる変人でしょう。この記事は道具図鑑なので、その他もろもろの話は別の機会にゆずります。道具図鑑 草刈機(モアその他)_e0182430_214365.jpg
 
  ところでラウンドアップの容器が、口の大きさといい取っ手の向きといい、水を汲んで移し変えるのに非常に使いやすいのです。というわけで、我が家では除草剤は愛用していませんが、除草剤の入れ物は愛用しています。
 

by hyakusyo-mikan | 2011-08-10 21:23 | 農作業道具図鑑